ユニクロ vs ZOZO対決の構図は、日経新聞が連載を続けているためになかなか終わらないわけですが、注目点とネットで見られる誤解について見てみたいと思います。
目次
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ユニクロ vs ZOZO対決の見どころ
ZOZOには生産背景がない、ユニクロはどうなのか
ユニクロ社長は「スタートトゥデイには⽣産背景がない」と指摘しました。
たしかに、スーツを頼んでも数か月待ちですし、注文してもなかなか来ない製品もあります。
裏返しで言うと「ユニクロには生産背景がある」ということになります。
実際に工場を見たわけではありませんので、ユーザー目線で、ユニクロとZOZOの生産背景を考えてみたいと思います。
ユニクロジーンズの生産背景
ユニクロのジーンズは、昨年ぐらいからLAのジーンズイノベーションセンターで開発しています。デニムの本場での研究開発拠点がユニクロジーンズに説得力を与えています。生地は岡山のカイハラです。デニムジャケットにはリーバイスを支えたコーンミルズ社のストレッチデニムも採用しています。
LAジーンズイノベーションセンターにカイハラにコーンミルズですから生産背景はユーザーに伝わっています。
一方、ZOZOのデニムはどうでしょうか。
ZOZOジーンズのNFCタグ
生産背景的には、送られてきたジーンズに中国製と書かれているだけで、背景はまったく読み取れません。つくられた工程が見えにくくなっているようなところはあります。
しかし、実際にモノが出来ていますので、生産背景はあります。ユニクロ社長の言ったのは、ユーザーに語れるほどの生産背景はないんじゃないの? ということかもしれませんね。それは品質にダイレクトにあらわれます。
また、ZOZOジーンズには、一本一本に情報を記録読み取りできるNFCタグがついています。
ただ、ちょっと不思議(?)だったのはジーンズとTシャツの双方に「ZOZONFC」なるNFCタグが付いていて、触ると中にチップが入っていることがわかる。コレはなんのために付けてるんだろう? 在庫管理(・ω・)? pic.twitter.com/tj9AOQR6te
— もとき てつ™ (@tetsukichi) 2018年8月1日
生産背景はまだ十分でなくても、生産管理はしっかりしています。おそらくこのNFCタグで、大量の種類のオーダーを間違えないよう管理しているのでしょう。
ホールガーメントが次のキラーコンテンツ
今回のユニクロの柳井社長の「おもちゃ」発言には、ZOZO(スタートトゥデイ)がホールガーメント製品の企画を発表したことにあると日経新聞には書かれていました。
ホールガーメントを重要戦略としているユニクロからすると、看過できない事態だったようです。
ホールガーメントとは?
カジュアル好きではおなじみの技術なんですが、ユニクロで発売されているホールガーメント製品を見てみましょう。
日本発の最先端技術「ホールガーメント」が創る革新的ニット。
— ユニクロ (@UNIQLO_JP) 2018年3月4日
縫い目なく編みあげられたニットウェアがボディラインに美しく寄り添います。https://t.co/CJjBGB5ZLZ pic.twitter.com/f9cpr7wLaq
普通の製品ですと、表生地と裏生地をぺたっと縫い合わせますが、ホールガーメントですと縫い目なく立体的に生地を織ることができます。
誰でもわかるレベルで着た感じが違うぞとなるわけです。
身近なところでは、チャンピオンのT1011(ティーテンイレブン)というTシャツがホールガーメントです。表裏の縫い目がないので胴部分が丸いんですね。
ユニクロユーがホールガーメントのTシャツを出すのはやめて欲しい感じもしますが、いずれ出すでしょう。
問題は価格です。T1011の定価は5000円以上しますし、安く買えても3000円台です。
Tシャツですが立派なアウターレベルで仕上がっています。ポケ付きもあります。
シップスでも、ホールガーメントのニットTシャツを出しています。
このホールガーメントで新しい技術を次々と開発しているのが、島精機です。
「人件費のかかる縫製をなくせば、日本のニット業界は十分やっていける」。糸をセットすれば自動で立体的なニット製品を編み上げる #ホールガーメント 機を開発し、世界を驚かせた #島精機。しかし #島正博 氏は出来に満足していませんでした。#仕事人秘録 #日経産業新聞https://t.co/8uLnKTbMNA
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2018年3月3日
日経新聞でも島精機とホールガーメントをたびたび記事にしています。
ユニクロは島精機との提携のプレスリリースを、ZOZOがホールガーメントを発表した後に出しています。
ファーストリテと島精機製作所、戦略的パートナーシップを強化 | ロイター
ユニクロもZOZOもホールガーメントを今後のキラーコンテンツ的なテクノロジーと見てるんでしょうね。
本当の脅威はホールガーメントが本格的に起動した時。
— 水野太輔(創る人) (@daisukeymizuno) 2018年8月6日
ユニクロ vs ZOZO対決の誤解
この対決についての幾つかの誤解になります。
ZOZOスーツは破壊的イノベーションとなり得るか
破壊的イノベーションは、最初は「おもちゃ」扱いだったことから、ZOZOスーツも本物だという認識がひろがりましたが、実際には、ジーンズに特化したスマートレギンスというう先行サービスがあって、今のところは爆発的にひろがっているわけではない感じです。
Finding the perfect pair of jeans just got way easier. We tried on a pair of “smart shorts” and they were able to find the exact measurements of our waist and hips. https://t.co/fcfT2fMlLb pic.twitter.com/miWgd5OwSJ
— CNBC (@CNBC) 2018年7月18日
スマートレギンスなどもファッションテックの起爆剤になり得るかの先行指標としては参考になるかと思います。今後の経過でしょうね。
柳井社長はファッションテックに興味がないのか
柳井社長がテクノロジーに興味がないというツイートを幾つか見ましたが、実際には着々と準備をすすめています。ネット販売を増やすために、いずれ店舗を採寸&ショールーム化するでしょう。
アベマTVでは、実際にそうした発言も紹介されていました。
出典:アベマプライム
すでに採寸技術は研究中です。
スタッフに採寸させるのは技術が必要ですので、試着室に3Dスキャンを置くような方向になるかと思います。
ユニクロ vs ZOZO対決の行方
個人的には、ユニクロ vs ZOZOの対決は、シビリゼーション vs カルチャーぐらいに違和感があります。競合しない方が生産背景もシェアできていいものができると思うんですが、そうもいかない感じです。
ホールガーメントの例のようにイノベーションの部分で抜き差しならない関係になっていくのでしょう。
ユニクロ vs ZOZO対決の行方というのは、実は簡単な話で、どちらをユーザーが多く支持するかだけになります。文明と文化のような関係になればいいんですけどね。
ユニクロや他のメーカーもいずれぴったりをやってくるようになるでしょうから、生産背景を確保して、ZOZOらしさを感じられるプライベートブランド製品をつくることができるかが、見たいですね。
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